BASKETBALL | [連載] New Voyage ~東海大男子バスケットボール部”SEAGULLS”の挑戦
New Voyage ~東海大男子バスケットボール部”SEAGULLS”の挑戦(2025/11/25)
10月5日、関東大学リーグ(1部)における早稲田大との首位攻防戦に敗れた後、東海大の選手たちは大きく肩を落とした。
90-110。完敗だった。
試合後、入野貴幸は淡々と、きっぱりと試合を振り返った。
「感覚がオフェンシブな選手が多いこともあって、1人ひとりでしっかり守るというマインドが統一されていなかったなと。ゲーム中、何回も何回も『バラバラになるな』と言いましたが、『自分のプレーがうまくいかない』という気持ちをコートに出してしまっているというか。そういうときに誰か手を叩いて励ませるプレーヤーがいるかというとそうではないし、それじゃあこういうゲームは勝ち切れないですよね」
残り3試合を残し、首位の早稲田大とのゲーム差は1。ここで勝てば逆転優勝が狙える。もちろん気持ちは入っていた。しかし、ほうぼうから放たれた細い矢で核心を射抜くことはできなかった。試合中に指揮官ができることもあまり多くなかった。
18勝4敗の準優勝という結果でリーグを終え、インカレを間近に控えた11月中旬、我々は入野の研究室を訪れた。入野は改めてこの試合とリーグを振り返った。
「早稲田さん、強かったなあと。本当に敵ながらあっぱれでした。上級生があまり出ていないチームの若さ、監督1年目の私の若さが出てしまったかもしれません。選手・スタッフともにこの敗戦を真摯に受け止めて、次の日の神大戦ですぐにカムバック(77-63で勝利)できたことはチームとしてのステップアップを感じました」

大会後、チームはインカレに向けて入念な棚卸しとフォーカスポイントの再設定を行い、再スタートを切った。重きを置いたのは原点と基礎の見直しだ。
「今シーズンに取り組んできたことに一貫性を持つために、オフェンスとディフェンス両面を整理し、全員の目線を合わせてから、ラントレーニング、ディフェンスフットワーク、負荷高めのウエートトレーニングで体をレディな状態にしました。あとはリーグを戦って実感したストロングポイントの確認ですね。できていないことに目を向けることも大事なんですが、それよりもチームとしての強み、選手個々の強みを理解し合ってやっていこうとスタートしました」
入野体制1年目のシーガルスが目指してきたのは、強固なディフェンスに加え、選手たちの感性を生かしたトランジションオフェンス。粒ぞろいの才能を持った選手たちのポテンシャルを引き出すシステムを用意し、化学反応の絶えない、いきいきとしたバスケットボールを生み出そうとしている。
「各ポジションに得点能力の高い選手がいるので、彼らのポテンシャルを最大限引き出したいという思いが指導のベースにあります。既存のオフェンスに当てはめてやるというよりも、彼らがお互いの能力を伸びやかに発揮できるバスケットを作ることが大事だと思っています」

入野が掲げているのは、1人の動きに合わせてその他の4人が動く「リード&リアクト」。シンプルなシステムだが、お互いの考えやプレーの引き出しを理解し合っていなければ決して成立しない。「まあ時間がかかるんですよね、当然」と入野は苦笑したが、チームはこれを構築するために春先から着々と準備をしてきた。そして、インカレはその集大成を披露する場所となる。
シーガルスのインカレ初戦は4日。どのチームが勝ち上がってこようと、まずは自分たちの力を100%発揮し、相手を自らの土俵に引きずり込むような戦いを目指している。
「大学生が面白いのは、成熟と未成熟のちょうど狭間にいるところ。ミスが起きることもありますが、一致団結した時のパワーはプロよりも見ごたえがあるんじゃないかなと思います」と入野は言った。

この連載は、3〜40分程度の収録と20分弱の雑談から成り立っている。この日も、Bリーグの解説のこと、バスケットボールIQの定義方法、欧州サッカーのことなどをとりとめなく話しているうちに、入野はインカレに向けた膨大な(すべては見ていないが、修士論文を規定枚数の倍書いた男が作る資料は間違いなく膨大だろう)スカウティング資料の一部を我々に披露し、インカレに向けた細かな準備について話をした。
勝負というのは決して思い通りにいかないものだ。早稲田戦のように、気持ちはあれどどうにもならない試合もある。人々はただひたすらに、その確度を高め、つかみとるための思考、準備、鍛錬を積み重ねていくしかない。
2限目が終わる時間が近づくと、シーガルスが根城とする大学総合体育館の観客席には部員たちがぞろぞろと集まりだす。彼らは授業終了のチャイムが鳴ると弾かれたようにコートに入り、シューティングに汗を流す。
名門のプライドと、誰にも負けたくないという意地と、バスケットボールが楽しいという喜びと。そんな積み重ねがシーズンラストの戦いで実を結ぶことを願うばかりだ。