BASKETBALL | [連載] New Voyage ~東海大男子バスケットボール部”SEAGULLS”の挑戦

New Voyage ~東海大男子バスケットボール部”SEAGULLS”の挑戦(2025/12/23)vol.1

interview |

photo by Kazuki Okamoto / text by Miho Awokie

「強く。強く」

泣きじゃくる直井隼也を抱きかかえながら、キャプテンの鈴木暉將がそう繰り返していた。

シーズン最後の戦いにして大学バスケに最高峰に君臨するインカレ(全日本大学選手権)で、シーガルスが一番欲しかったものは手に入らなかった。

準決勝の白鷗大戦は74-95。3位決定戦の日本経済大戦は61-69。

最終結果、4位。

「プロセスは間違っていなかったと思います。ただ、結果がおよばなかったということです」

インカレの最終日から約10日後、入野貴幸はこのように大会を振り返った。

大学の指揮官として初のシーズン、入野がどのようなプロセスを描いたかは、これまでの連載で触れてきたとおりだ。

激しいディフェンス。選手たちに多くの裁量が委ねられたハイテンポなオフェンス。

「全体的には体現できたと思うんですが、白鷗大戦は立ち上がりの闘争心というか気迫というか、タクティカルな部分でなくエナジーの部分で上回られてしまいました。白鷗大学さんと互角の気迫を最初から出して、イーブンな立ち上がりになっていたら、『最後にバスケット的にどちらが優位に立てるか』というゲームに持ち込めたと思うのですが。カテゴリーにかかわらず、試合の入りから『絶対に負けない』という気迫を全面に出してくことの重要性を改めて痛感しましたね」

今季の東海大は、下級生スターが揃うがゆえの強さと脆さを内包しているチームだった。それぞれが備える「俺がやる」という強い気持ちと行動が、チームとしてきれいにまとまりきらない試合がいくつかあった。

赤間賢人もその一人だった。

12月17日にドラフト志望届を提出した赤間は、インカレが始まる2週間ほど前、大学を退学しBリーグにアーリーエントリーする意向を入野に伝えていた。入野は「インカレで優勝して、MVPをとって、みんなでガッツポーズしてから行け」と言葉を返し、部員たちに退部を伝えるのはインカレ後とすることにした。

インカレにおける彼のパフォーマンスには、正直違和感があった。ギアが入り切っていないような、どこか別の方向を向いているような、そんな印象を受けた。ニュースが耳に入ったときは「大学バスケに対する気持ちが切れていたのだろうか」と邪推したが、入野はむしろ逆だと言った。

「インカレ前の練習から、本当に鬼気迫る感じだったんです。空回りしてしまう日もあったけれど『これが最後なんだ』という思いの詰まった練習をしていたので、そこはコーチとしてある意味嬉しくはありました。ただ、ちょっと背負い込ませすぎたかなとも思います。日体大戦はファウルトラブルだったし、白鷗大戦もいまいち乗り切れなかった。多分、大学2年生としては相当シビアな状況でプレーしていたと思うんですよね。いずれ誰もが経験することとはいえ、ちょっとタイミングが早かったというか、彼の実力と置かれている立場にギャップがあったかもしれない。もっと肩の荷を下ろしてあげてもよかったかもしれません」

入野は、飛び抜けた才能と、どこか浮き世離れしたキャラクターを持つ赤間と向き合うことを楽しがっているように見えた。取材に訪れるたび、彼の技術がこれだけ向上しているとか、こんな面白い言動があったとか、マインドが少しずつ変わっていっているのだということをうれしそうに話していた。

教員として、学生を手元に預かれる時間が有限であることは当然理解しているが、予想外に早く別れが訪れたことに対する無念さ、さみしさはある。ただ、一度結ばれた縁は同じ道を歩む限り続いていくと考えられるのは、教員ならではなのかもしれない。

「友人というか、同じ社会人としてというか、賢人とはこれからもフランクに付き合っていきたいですね。大学に遊びに来たときに、『入野さん、飯行きましょうよ』って気軽に言ってくれるような。今はもちろん、そんなことは言わないですけど」

入野は笑ってそう言った。

PROFILE

入野 貴幸(Irino Takayuki)
入野 貴幸(Irino Takayuki)
1982年生まれ、神奈川県出身。東海大学付属第三高(現東海大学付属諏訪高)〜東海大。4年次に主将として創部初の関東大学リーグ1部昇格に貢献した。卒業後は東海大三高男子部監督としてインターハイベスト4などの成績を残し、今年度より東海大ヘッドコーチに就任。

著者

青木 美帆(Miho Awokie)
青木 美帆(Miho Awokie)
フリーライター。高校3年時にたまたまインターハイを観戦したことをきっかけにバスケに取り憑かれ、早稲田大学入学後に取材・執筆活動を開始。 X:@awokie Instagram:@miho.awokie

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