FOOTBALL | [連載] 篠山竜青が今、考えていること

篠山竜青が今、考えていること(2026/03/08)

interview |

photo by Kazuki Okamoto / text by Miho Awokie

この日、川崎ブレイブサンダースは端的に言えばひどい内容で滋賀レイクスに敗れた。いつも「応援してくれている人に勝ち負け以外の何を見せるか」と繰り返し、クラッチタイムこそ力を発揮するはずの篠山も、フリースローを落とし、3ポイントシュートを外し、ラストプレーはターンオーバーの当事者になった。

「『最低限これだけはやってほしい』というベースにチームが届いていないことへのフラストレーションみたいなものがめちゃくちゃあって、そこに引っ張られて矢印が外に向いてしまったというか。それはすごく良くなかったと思います。自分自身もベテランとしてもっとまわりを落ち着かせなきゃ、状況を打開しなきゃと思いつつそれができなかった悔しさもあるし……色々と反省点の多いゲームになりました」

最低限のベース。篠山の言うそれは、戦術的な約束事を全員が正しく遂行することだ。

篠山の前に取材に応じた勝久ジェフリーヘッドコーチも、似たようなことを話していた。指揮官はどうすれば選手たちを”最低限”にまで導けるのかと苦悩していた。

「『これだけはちゃんとやろう』と確認したことが遂行できていないポゼッションが、オフェンスにもディフェンスにもありました。見ている側からすると『なぜできないの?』というモヤモヤがあります」

滋賀戦の第1戦がそうであったように、川崎はシュートが入るときは強い。ただ、入らなかったときは立て直しが効かない。「水物」と言われるシュートと違い、一定の成果をコンスタントに出し続けやすいディフェンスやチームオフェンスが、遂行力の低さゆえに機能しないからだ。

最近バスケットボール界でよく使われる言葉にすると、偶発性の高いプレーが多く、ゆえに再現性が低い。だから試合内容が安定しない。

ここまで川崎は同一カードで一度も連勝できていなかった。その理由を記者に問われた勝久ヘッドコーチは、一瞬ぐっと何かをこらえた後に「素晴らしい質問だと思います」と言い、話した。

「自分でも連勝できていないということは重く受け止めています。ミーティングの仕方だったり、メッセージの伝え方だったり、色々考えているつもりなんですけど、結果は結果なので。まあ果たしてそれが自分からのメッセージの問題なのか、2試合連続でやりきる力がないからなのか、そこは……ごめんなさい。いい答えが出せないですね。だから苦しんでるんだと思います」

篠山はきっぱりと言った。

「練習中も、試合中も『これをやりましょう』という話は常にしているけど、できない。コーチ陣の責任ではないと思います」

このような苦しい状況ではあるが、チームには新たな希望が生まれている。シーズン前の負傷で長らく戦線を離れていた米須玲音が、前日の第1戦で今季初のホームゲームのコートに立ち、12得点6アシストの活躍で勝利をもたらした。プレシーズンマッチではうまく合わなかったドゥシャン・リスティッチへのパスを何度もドンピシャで通し、オフから課題としてきた3ポイントシュートを6分の4という高確率で沈めた。

米須が滋賀のガード陣に激しくディフェンスを仕掛けられる時間帯には、岡田大河がコートに送り出された。岡田は滋賀の激しいプレッシャーディフェンスを軽くいなしてフロントコートにボールを運び、自身のペイントアタックを織り交ぜながらオフェンスを作った。

篠山は、異なるカラーを持つ3人のポイントガードが揃ったことを喜んでいた。

「それぞれに強みがあるし、困った時にはツーガードもできるし、プレータイムもシェアできる。昨日の試合はベンチで見てる時間が長かったですけどいい部分がたくさん出たので、やっぱりワクワクしたし、良かったですよね。僕はせっかくここまで元気に好調でやれているので、アグレッシブにリングに向かう、シュートを打っていくというところは突き詰めてやっていければいいなと思います。あと、2人ともどちらかというとアシストが得意な選手なので、『お前たちもこれくらいシュートに行くんだぞ』って、1つの……うっすいかもしれないですけど乗り越えるべき壁になれればいいなと思っています」

この試合で負傷したエマニュエル・テリーが欠場した11日の群馬クレインサンダーズ戦は、大敗に終わった。しかしその週末、チームはファイティングイーグルス名古屋戦で今季初の同一カード連勝を果たした。苦悩し、苛立ち、途方に暮れていた指揮官と主将はそれでも必死に前を向き、知恵を絞り、自身と仲間を動かし、少しずつ前へ進んでいる。

ここからの残り16試合、川崎ブレイブサンダースというチームを構成する選手たちは、何を求め、何にこだわってシーズンのフィナーレを迎えるべきなのか。篠山は選手一人ひとりが責任と覚悟を持つことではないかと言った。

「日本人とか外国籍とか関係なく、それぞれがちゃんとステップアップするというところにちゃんとフォーカスしてやっていかないといけないと思います。かつてのニック・ファジーカスのような得点を量産できる外国籍選手やアジア枠がいないからこそ、特に日本人が頑張らないと。もっともっと日本人選手がスタッツにこだわって、アピールして、自分自身の価値を高めることがチームの価値を高めることに直結すると思います」

“勇敢たれ”。選手たちはクラブが長らく掲げてきたアイデンティティに還る。  

PROFILE

篠山 竜青(Ryusei Shinoyama)
篠山 竜青(Ryusei Shinoyama)
1988年生まれ、神奈川県横浜市出身。178センチ(ウイングスパンは約190センチ)。小学生のときに兄姉の影響でバスケを始め、北陸高校、日本大学時代には日本一を達成。2011年にクラブの前身にあたる東芝バスケ部に加入。主力のポイントガードとして長きに渡ってチームを牽引してきた。好きな漫画は松本大洋の「ピンポン」。

著者

青木 美帆(Miho Awokie)
青木 美帆(Miho Awokie)
フリーライター。高校3年時にたまたまインターハイを観戦したことをきっかけにバスケに取り憑かれ、早稲田大学入学後に取材・執筆活動を開始。 X:@awokie Instagram:@miho.awokie

Feature
特集

Pick Up
注目の話題・情報