FOOTBALL | [連載] 因髄分解

因髄分解 | オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

interview |

text by Gaku Tashiro

 因髄分解とは、各業界のプロフェッショナルな方々が考えるこだわりを【因数分解】し、そのこだわりを産む【骨の髄】にある要素を探し、「日本サッカーのこれからについて」を考える上でのヒントを探る旅である。

Design: Tomoya Onuki

最近テンションが「ブチ上がった」瞬間

 僕のところにも反響は大きくありましたよ。またやってくれって。

 多分いままでもあのような形式のイベントはあったと思うんですけど、YAGIが実施したことで届くひとたちが多かったのかなって印象ですね。

昨年末に開催されたYAGI VVORLD CUP

 あのYAGI VVORLD CUPから半年経って、7月にスポーツメディアFERGUS(ファーガス)を立ち上げました。そのメディアで、スポーツ以外のエンターテイメントのプロフェッショナルにお話を聞く連載をしたいと思っています。早速ですが、おふたりが「最近テンションがブチ上がった瞬間」について教えていただけますでしょうか。

 僕はそれこそレイジさん絡みとそれ以外で2つあります。前者はYAGI VVORLD CUPの本番のとき、みんなが試合をしている最中にレイジさんがDJをされていて、ウイニングイレブンの音源を流したんですよね。それを聞いたギヴンさん(Giorgio Blaise Givvn)が「それはちげぇよ」って指摘している様子をみたときに1番ブチ上がりました。

 爆笑

 ギヴンさんとレイジさんってかなり意思疎通が取れていると思いますし、どちらかというと僕はそのときレイジさんのサッカー観的なものがその選曲から垣間みえて、かなり好きだったんですよね。それでもギヴンさんのバックグラウンドを考えると、それはナシだったんだなって。

 多分ですけど、俺のかけたウイニングイレブンのシリーズが正解ではなかったんじゃないですかね。

 ウイイレそのものは正解だけれども、年代があっていなかったみたいなことですか。

 そうそう。ウイイレとかFIFAの曲をかけるのはいいんだけど、「その年代のやつじゃないんだよな」って感じな気がします。そっちよりこっちのほうが世代でみんながアガるだろうみたいな。

 もうひとつプロフェッショナルな視点だったわけですか(笑)僕はその光景を目にしたときにめちゃくちゃいいなと思ったんですよね。ぶっちゃけみんな試合に集中しているし、誰もそこで流れている音楽を気にしていなかった状況だったと思うんです。レイジさんもみんなが盛り上がるかなと思ってかけた曲に対して、あの日めちゃくちゃ忙しかったはずのギヴンさんがレイジさんの元に駆け寄って言った「それはちげぇよ」に本気を感じました。

 ギヴンさんは本気ですから。普通にマジギレしますからね。俺はそもそも30歳過ぎまでサッカーをやったことすらなかったですし、やるのが好きなだけで試合も観ないんですよね。だから、サッカーやっている人たちが試合中に話している言葉もほとんどわからないんですよ。「中切らない、中切らない」とか言われても全然わからない。俺からしたら、周りがなぜ怒っているのか、わからない日々がずっと続いています。ギヴンさんなんて、普段は寡黙なタイプなのに、ピッチに入ったら人が変わりますからね。

 あの日も主催者として現場にいたのに、何回か試合に参加したときにガッツリ削ってましたもんね。

Giorgio Blaise Givvn

 もう一個はなんですか?

 もう一個は最近、ロサンゼルスで起こった出来事です。どうしても出会いたかったサッカークラブのブランディングマネージャーに、知り合いの紹介で出会うことができて。しかも、普段はセレブリティしか観戦していないVIP席で一緒にみようと誘ってくれたんです。異国で自分でなにかを切り拓いた経験が初めてだったので、そのときはブチ上がりましたね。ロサンゼルスの洗練されたサッカースタジアムも作用して、なんだか夢みたいな時間でした。

 それは俺も伝えたいことではあります。この世では一歩踏み出すととんでもないことが起こったりするんですよね。逆にいうと一歩踏み出すことをできないひとがほとんどなんですけど。実際にやってみたり、行ってみると、嘘みたいな夢みたいな出来事って想像以上に簡単に起こりまくるから。俺からしたらYAGI VVORLD CUPみたいな大会を開催するなんてことも同じようなものでしたから。30歳過ぎまで一切スポーツをやっていなかったやつが、DJブースを用意して、メンバーも豪華な人たちと、ユニフォームを作ってトロフィーを作るみたいな。簡単なことではないですし、田代くんや竹内さん(BAGGAGE COFFEEオーナー)のように一緒にやってくれるひとがいたからですけど、実際にやってみればあれだけのことができたわけですよね。だから田代くんの話にもあったけれど、海外に行きたいと思う人が大半な中で、思うだけでなく実際に行ったことがやっぱり大事なんだと思うんです。生活ができるようになるとか、色々な観点で成功ってありますけれど、それ以上に得られることが多いですから。

 ただ移動しただけって感覚ですからね(笑)そんななかでレイジさんの最近ブチ上がった瞬間の要素を分解できたらおもしろいなと思っています。

 超最近なんですけど、clubasia (クラブ エイジア)でBLOCKというイベントがあって。そこは俺らが遊んでいる界隈よりもハードなパーティなんですよね。遊びにいくのに覚悟が必要な場所なんですけど、それすらを楽しむような場所で。そのイベントに行った時に、Jin DoggがHipHop生誕50周年ってことで他人の曲をかけつづけていたんですけど、かけていた曲が全部わかったときにブチ上がりましたね。「あぁ俺、HipHopわりとわかってるんだ」って思いました。

 いままで自分が聞いてきた音楽だったり、仲の良い界隈だったりが正解だったねって言われたような感覚ですね。

 そうですね。そのイベントは好きなんですけど、自分がDJしたいかと言われるとそれはすこし違うんです。Jin Doggのチョイスがちょっとトリッキーで、俺ら世代の流行りだけではなく、昔からのHipHopの流れをわかっていないと辿りつかない少しだけマニアックな曲が多くかかっていました。あぁめっちゃわかってるなって感じのチョイスをしていたんですよね。

 年末にレイジさんと話をしていて印象的だったのが、「場を客観視して期待されていることを意識してやる」ってお話していたのですが、それにも通じそうですね。多分覚えてないと思うんですけど(笑)

 俺、本当にウ〇コなんですよ(笑)一回したら流しちゃうから。でも結構デカめのウ〇コはよくするから人の印象に残っていることは多いかもしれない。全くその発言は覚えてないですけど、確かにその話に通じていますよね。Jin Doggは暴れる系なんですよ。”俺らはここでこれをやるから”みたいなスタンスをずっと持っていて。そんな彼らが「HipHopって知ってっか」って選んだ曲を全部わかったことが嬉しかったんですよね。Jin Doggも仲良いですし、俺もそのイベントに出たことはあるんですけど、BLOCKとYAGIで役割が違うからこそ、そこの認識を擦り合わせることができた感覚でした。突き放す系のBLOCKと対照的に、YAGIは誰かの一歩目を応援する場所でありたいんです。すごく嬉しいのは、イベントに参加するのはYAGIがはじめてですって言われたとき。そんなやつが一丁前のクラブで遊ぶやつになったときも嬉しいですよね。あとは仲良くなった子の初DJをYAGIでやらせるとか、そういう場ですね。

 それこそececちゃんとかもそうですもんね。

 彼なんて、いまSupremeに呼ばれて韓国に行ってますからね。

 YAGI VVORLD CUPの開会式でむちゃぶりされていた彼が。すごい話です。

 あそこで打ち返せるバイタリティがあるからこそ、世界に求められるだろうなと思います。

 プレー中はギブンさんにめっちゃ怒られてましたけど。

DJ ecec

 いま財布にチ〇チ〇がつきました。

 ちょっと待って、どういうことですか。

 チ〇チ〇のチャックです。最新のブチ上がりはチ〇チ〇のチャックがついたことですかね。

 ありがとうございます。多分スポーツメディアなので大丈夫です。

「ダサい」を構築する要素

 では、逆に「ダサい」に関して伺います。ブチ上がるとは対照的なのかもしれませんが、ダサいを構築する要素について考えていきたいと思っています。これに関して、田代くんはレイジさんとのエピソードがあるんですよね。

 そうなんです。これも工藤さんとギヴンさんを待っているときに…

 ふたりで恵比寿のドトールに行ったときですよね。覚えてます。

 真面目な話なんて一切していなかったんですけど、なにかのタイミングでレイジさんが「YAGIはなにも決まったことはなにもないし、ノリで決めているんだけれど、ダサいものに関する共通の認識があるんだよね」と話をしていたことが印象に残っていて。今回の対談にあたって、さまざまなメディアでの発言を拝見したんですけど、これにまつわる発言は一切ありませんでした。これすら大きなウ〇コだった可能性はありそうですけど、それってレイジさんの根にある発言だなと思ったんですよね。

 そうなんですよ。あるんです、共通の認識が。でもそれは言葉にできないんです。説明できるものだったら価値観を育てることは誰にでもできると思うんですよね。これはこうだから「ダサい」って定義ができれば、誰とでも仕事ができるはずです。判断基準を言語化できてるんですから。YAGIの場合はそれが言語化できないからすごいんです。そんな仲間に会えたことが幸せで、そこの基準があるからさっきのDJでウイイレの音声をかけた件でも、ギヴンの指摘を「あぁ違うんだ」と素直に受け入れられる。指摘に対して説明してよ、とはならない。特にサッカーに関してはわからないフィールドなので、わからない分野でわからない音楽をかけた。それに対しての指摘に関しては素直に勉強だと思っています。フランス料理作ってね、みたいな感じです。「卵白のタイミングはいまじゃないから」って言われているような、それくらい俺にとっては未知なんですよね、サッカーって。

 3年ほどやっていても、まだ未知と感じるんですね。

 ゴールを背にして球とマークについているひとをみながら動くなんて、たった3年では身につかない動きですよね。それでいて守りのときと攻めのときで自然と動きが変わるなんて、ずっと考えていないとできないことです。それなのに意味不明な専門用語が飛び交ってくるんですから、理不尽極まりないですよね。「入れ替わらない」とかいまだにわからないですから。どういう意味なのそれって。とにかく俺はいま、ダメな動きをしていることしかわからないです。だからできることはとにかく走ること。体力でカバーするしかないですね。動くしかない。

 予期せずスポーツメディアっぽい話に(笑)

 スポーツのことはわからないですけど、スポーツを好きになっていますし、スポーツを通じて学んだことも多いから自分のことばで話すことはできますね。

 僕がレイジさんの好きなところは腐さないところなんですよね。サッカーはわからないけれど、わかるまで真摯に向き合う、自分でやってみるまで絶対にバカにしない。そんな印象があります。だからこそレイジさんが感じる「ダサい」に関してものすごく興味があるんです。

 確かにそれはあるかもしれないです。DJをしていても、なんとなく流行っているとか、なんとなく使えそうな音楽はたくさんあるんですけど、心のそこから自分でハマっていないと上手くいかないんですよね。EDMとはハウスのジャンルで一定の展開が決まっていて、この後こう盛り上がりますって曲は、誰でも間違えずに繋げさえすればプレイはできます。でも自分がその曲にハマって、ちゃんと好きだって気持ちでかけないと全然轟いていかないですし、空気が作りきれないんですよね。そもそもそれなら誰でもいいじゃんって話ですし。極端な話、いまはデータでDJができるわけですからプレイリストでも流しておけばいいんですよ、本当のところは。知っている曲でも知らない曲でも関係なく盛り上がることができるのはエネルギーを共有できているからだと思いますし、それってスポーツをやっていても思いますもん、阿吽の呼吸というか。DJやっていてもさっきまで大人しく携帯いじっていた人がK-POPかけた瞬間に突然騒ぎ出したり。DJって手元でアレコレやっているように見えるけど、お客さんの年齢層とかファッションとかも見てその場の空間を把握することが大切だと思っています。だからこそどんどん盛り上げてしまうと、数分前の盛り上がりを超える爆発を作らなければいけないので、本当にプレッシャーですよね。一発も外さずにやらなければいけない1時間なので。

 世に出ているクオリティは高いのかもしれないけれど、そこまで好きになれない事象はその要素を含んでいる気がします。愛を感じないというか、哲学のない模倣品というか。この時代だからこそ表現技法のクオリティはどんどん上がっていくし、国を跨いで高品質の似たものが増えていくと思うんですけど、それだけでしかないものに魅力を感じないんですよね。丁寧な伝え方でなくていいから、私はこれが最高だと思うんだけどどうよ、って提示された方が気持ちがいい。
いまのその話を聞いていて、ひとつ解せたことがあって。YAGIの企画を作っているときに何度か打ち合わせをしていたと思うんですけど、レイジさんが喋る時とそうでないときが如実に分かれていたんですよ。ビブスを工藤さんと作ろうとか、トロフィーを錆びさせようみたいなレイジさんが過去に経験していてアイデアがあるときは積極的に話すけれど、競技のレギュレーションとかに関しては一切なにも言わない。経験しているが故に、どこまで高められるかが自分のなかでわかるからこだわる。逆にわからないことは専門家にパスをする。その線引きがあったんだなぁと感じました。

 社会の仕組みにも通ずると思うんですけど、なにもわかっていないのに、もしくは自分は経験していないのに口出しだけしてくる大人っているじゃないですか。それだけにはなりたくないですよね。というかなれないです。サッカーのことは本当にわからないから、わかっているひとに任せますよというスタンスでした。それをギヴンがわかるから任せている。だから本当に俺とギヴンのバランスがいいんですよね。ちょうど勾玉みたいにカバーしている。

 心地よかったですもん。最初超怖かったですけど(笑)

 そうだったんだ(笑)話を「ダサいとはなにか」に戻すと、迷いが生じている状況、それが目に見えているのはダサいと思います。行くなら行く、引くなら引くというか、イベント打つにしてもウジウジしているならやるなって感じです。やるって決めたなら勝つようにやる。結果負けたとしてもそれはダサいわけじゃないんですよ。それはサッカーをはじめたことで気がついたことでもあります。この間の大会のときも言ったかもしれないんですけど、勝ちと負けがあるっていうのが昔は面白くなかったんです。明確にルールがあって、明確に勝ちと負けがあるってことに対して勘違いをしていたんでしょうね。勝ったからいいとか負けたからいいとか、それだけでない価値があることを知ったんです。これはジャンルの違いのようなもので、バラードかブチ上がる曲か、みたいなものです。俺は勝ちとか負けとかの言葉の意味を知らなかったんですよね、スポーツをやるまで。音楽にはそれがないんですよ。もちろん武道館売り切ったら勝ちなのか、みたいなのは人それぞれの尺度でありますけど、人ははいらなかったけどいいライブだってあるし、お客さんパンパンでも全然ライブに納得のいかないときもある。そういうのがスポーツに通じるんでしょうね。サッカーだって、1-3で負けたとしてもその1点がすごい良いゴールなら、とか。今まで点決められなかった子がようやく決められた、みたいな感動もあるわけじゃないですか。

 要するに自分の作ってるものに対して本気であるってことですよね。もしかしたら近い将来、レイジさんにも観る側の楽しみが訪れるかもしれないですね。それこそお子さんがスポーツを始めちゃったりしたら。

 そのドラマをわかっちゃったらそうですよね。
ブチ上がったことで思い出したんですけど、子どもが5歳になって、背中のボタンをひとりで止められるようになったんです。それを喜んで俺に見せてくるんですよ。それは本当にブチ上がりましたね。

 それは確かにブチ上がる。結局「ブチ上がる」とか「ダサい」とかって究極にパーソナルなことでしか動かない感情なのかもしれないですね。逆にいうとどの時代でも、いかにパーソナルに感じてもらうかを考えることが作り手としては必要なんだなと。

 本当にそうだと思いますよ。小さかった赤ちゃんが5歳になって、背中のボタンを止められるようになったのもブチ上がるし、ececちゃんが海外でDJしているのもブチ上がるし、身近な友だち、仲間とか家族がブチ上げてくれますね。

 それこそYAGIに高校球児がふらっと遊びにきたりして、仲良くなった彼が新たなブチ上がりとスポーツの楽しみかたをレイジさんに届けるかもしれないですね。

 俺、格闘技興味ないんですけど、(那須川)天心くんと知り合って、身近でいつも会っている友だちが天心vs武尊みたいなものを作っていて、あんな風に戦っていることに感動しましたよね。しかもちょっと違う軸での楽しみだったんですけど、那須川天心と俺、身長と体重が全く同じなんですよ。試合を観ているときにびっくりしました。165cm、57kgって一緒じゃんと思って。こんな体格がよくなくても日本一強くなれるんだ、感動を与えられるんだって。あれを観たあと、ちょっと筋トレをはじめましたもん。

 あの時期、やたらトレーニングの話をしていたのはそういう理由だったんですね(笑)

人の心に「刺さる」ための要素とはなにか。

 最後の質問です。以前、レイジさんのツイートにこのようなものがありました。このツイートに記載されていた「刺さる」要素とはどのようなものだったのでしょうか。これはスポーツ業界にも通ずることがあると思います。

 いまの音楽業界、売れる、売れないの言葉の意味がわけわかんなくなってきていて。いままでは、時代的にCDが売れすぎてしまっていたわけなのですが、音楽業界の感覚はいまも『売れすぎていた時代』のままなんですよね。Mr.Childrenがデビューした時なんて2万枚売っても全然売れないねって言われるような世界で、あたりまえに100万枚売れている時代があって。でもいまは10万枚売れたらすごいヒットといわれる時代ですよね。だから売れるって言葉の指標が大きく変わってきている。東京ドームを埋めたらなのか、Mステにでたらなのか、ひとによって変わってきているんですよね。それこそTikTokでバズったら「売れている」のかもしれないし。でも結局世代で思い出の曲とか、抜きたくても抜けない思い出の曲ってあるじゃないですか。聞くと下校中を思い出すような、刺さっちゃっている音楽、かかったらブチ上がっちゃう音楽、突き刺さり続けている音楽。方法論で評判を獲得するだけでなくて、誰かに刺さることを意識しつづけたいですよね。世の中に評価されたり、ビジネス的に成功しなくても、数十年後に誰かが「あれ俺の中で思い出の曲なんです」って思ってくれるものがいいです。だってTikTokでバズった曲を30年後に合唱できるのかな、アーティスト名わかるのかなって思いますもん。ああいうのってなんなんだろうって思いますよね。

 TTP(徹底的にパクる)と呼ばれる言葉の存在がかなり的確に表しているように、誰もが共通で持っている薄い膜のようなものに刺さっているもの、あるいはそこに刺すものをつくること自体はいまやそこまで難しくないんでしょうね。それこそTikTokではこの曲を使うとハネますよ、この編集方法でフォロワーが増えますよ、なんて情報もありますから。僕の場合、突き刺さったものって感じていることを高い解像度で代弁してくれたり、寄り添ってくれるものが多かった印象なのですが、主要なメディアが変わるとその体験すらも変わりつつあることに興味を持ちます。逆にいま、森羅万象のなかでブッ刺さっているものってなんなんでしょうね。

 やっぱりどんどん薄まっている感じはしますよね。いわゆる加山雄三とか力道山のようなスターは生まれないですよね、メディアがこれだけバラバラになっていると。テレビ、新聞みたいな一強のメディアがないので。紅白ですら全然知らない人がでてますから。

 そんな情報の届け方に王道がなくなりつつあるいま、レイジさんが考える「刺すための構成要素」はどのようになるんでしょう。

 バンドに関していうと難しいですね。OKAMOTO’Sで勝負しているフィールドはちょっと広いというか、自分の目の届かないところもあるので。でも「参加している感」がそれを作っているかなとは思います。客が客じゃないというか、BGMじゃなくて、自分の曲になっている。その作品や事柄の一部になっている感は大切にしていますね。それこそバンドで地方にツアーに行った時、小さな会場で現地の方がお金を払って見にきてくれていることには毎回びっくりしますもん。

 それは間違いなくサッカーにも通じるところなんだと思います。ファンがいかにクラブと共に歩んでいるかを感じることが熱を生むことに派生すると思いますし、逆にクラブがファンを「観客」として扱った瞬間にサッカークラブである必要がなくなるというか。「参加している感」に関して、レイジさんは自身の発信・発言でも意識していますよね。YAGIの企画を作っていたとき、僕は最初「YAGIさん」と企画を作っている感覚があったんですね。でもレイジさんが「みんな一緒でしょ」みたいな雰囲気を作ってくれて本当にやりやすかったんです。

 それは意識してますからね。次は豊洲とかでやりましょうよ。そういえば、あれからVerdyさんとか定期的にフットサルやってますよ、あれきっかけで。そうやってちょっとずつ成熟してくれたらいいなぁと思いますよね。

 帰国した際はまた遊んでください。今日はありがとうございました。

 もしかしたら俺らがそっちに行く方が早いかもしれないですね。

分解後記

 「ブチ上がる」とはなにか。を思考する上で、レイジさんの口から身内や仲間との言葉がでてきたことが興味深かったのだ。確かに、数多くのサッカーの試合を観てきたけれど「ブチ上がる」と呼ばれる言葉の意味に近かった観戦体験は、学生時代の球技大会にあったりする。あの日、カトウの遅れたスライディングに腹をかかえて笑い、クラスで静かなアイツがなぜか点を決めてヒーローになったあのドアマチュアな空間は、なぜ熱狂を生んでいたのだろう。フィールドは土だったし、選手の目線と同じ高さの応援席から向こうサイドでなにが起こっているかほとんどわからなかったけれど、なぜあんなにも盛り上がっていたのだろうか。

 高校野球はその上位互換で、そりゃ仲の良い友だちが立派な箱で試合をするならみんな観に行くよな、となる。それでいて、熱闘甲子園なんて選手のパーソナリティに迫る番組があるんだから、そりゃ好きになる。

 実はみんな一定のレベルさえ超えていれば、そんなにクオリティの高いものは欲していないのではないのだろうかとも思う。だってプロ野球よりも集客力のある高校野球の存在があるし、連れて行ってもらった銀座のインドカレー屋で食べたバターチキンカレーよりも、松屋がたまにやっているバターチキンカレーのほうが心に突き刺さったりするんだから。もはや食べ物を粗末にしているとすら感じる「ボタンを押すとごはんを定量で出し続けるだけの謎機械」が愛想なく繰りだすお米の群れと、もはや覚えるほど聞いた松屋のテーマソングが食欲をそそるんだから。本当に余計なお世話だけど、平野紗季子さんにはロイヤルホストより松屋に行ってほしいんだから。

 そう、一定のレベルとは、みんなの食卓であり、それ以上は実はそんなに求められていないんだろうな。だってこの間なぜか海外ビッグクラブが日本のスタジアムで行っていた試合はスカスカだったじゃない。値段や日程云々あれ、スターを集結させただけでは箱が埋まらなかった結果そのものが、ブチ上がるとはなにか。を考える上で最大のキーになっていそうである。サッカーなんてものは、たとえ暗転して火柱があがらなくても、昔から地域で可愛がっていた少年がついにエンブレムを叩いてピッチに入れば、それが最高級の演出なわけだ。だからそれに共感できる母数をいかに増やすかが、スタジアムの「ブチ上がり」をつくるんだろう。

 とかいろいろ御託を並べたわけだが、結局レイジさんは財布についたチ〇チ〇でブチ上がっていたので多分関係ないな。ない、関係ない。

PROFILE

オカモトレイジ(OKAMOTO'S)
オカモトレイジ(OKAMOTO'S)
1991年生まれ、東京都出身。 中学校の同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO'Sのドラマー。 デビュー当時は年間平均100本を超えるライブを展開し、海外公演等も積極的に実施。 2023年5月24日には、アニメ「Dr.STONE」エンディングテーマ曲「Where Do We Go?」をリリース。 6月25日からはTHE BAWDIES x OKAMOTO'S SPLIT TOUR 2023 [ON STAGE]を開催。 その活動の勢いは止まることを知らない。 ソロ活動としては、2022年秋に映画「もっと超越した所へ。」に本格演技初挑戦として出演するなど、メジャーシーンで活躍する一方、DJやエキシビション「YAGI」の主催も務める。

著者

田代 楽(Gaku Tashiro)
田代 楽(Gaku Tashiro)
カナディアン・プレミアリーグ パシフィックFC マーケティンググループ。26歳。バンクーバー在住。 大学卒業後、Jリーグ・川崎フロンターレでプロモーションを担当。国内のカルチャーと融合した企画を得意とし、22年、23年のJ開幕戦の企画責任者を務める。格闘技団体「RIZIN」とのタイアップを含む10個以上のイベントを企画・実行。配信しているPodcast「Football a Go Go」はポッドキャストランキング・スポーツカテゴリで最高6位入賞。Instagram:@gaku.tashiro

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