今シーズン初のホーム連勝がかかった試合を、ものにすることはできなかった。
「連勝すれば何かまた変わる感じはしたと思う。まぁ、まだ自分たちの現在地はそこまでいけないところなんだなってことは感じますけど」
篠山竜青は言った。
この日、島根スサノオマジックはジェームズ・マイケル・マカドゥと白濱僚祐、2人の先発メンバーを欠いていた。断然有利な状況だったにもかかわらず、川崎ブレイブサンダースは自分たちでリズムを崩してしまった。
「向こうのビッグマン(マカドゥ)が出れなくて、その代わりに介川選手(介川アンソニー翔)がつなぎで入ってきて、サイズ的にはかなりうちにアドバンテージがある状況の中で、ちょっとそこを意識しすぎたかなっていうところ。ミスマッチを探す前に局地戦に持ち込みすぎたりとか、そもそもスクリーンがちゃんと掛かっていないとか、いつものどおりのプレーが遂行しきれてないよねっていう粗さがやっぱり序盤はあったと思う。とはいえ、高さに絶対的なアドバンテージがある中で、それでもリバウンドを取られてしまうとか、ボールを下げたり取られちゃうとか、そういった部分の『いや、もっとうまくできるでしょ』っていうところのギャップみたいなところで自分自身もかなりフラストレーションを溜めてしまった。そこは反省点でした」

プレーがうまくいっていない理由は、もちろん現在進行形で理解していた。ただ、それをリーダーとして適切に軌道修正できたかというと、答えはノーだ。
「昔に比べれば、『言うべきことを厳しく言う』みたいなところはできるようになってきているとは思います。ただ、チームのために言わなきゃいけないことを厳しく言うのと、ただイライラして文句を言うのはやっぱ違うと思う。今日に関しては、僕は1人で勝手にイライラしてしまった」
そもそもこの日の篠山は、15得点6アシストの活躍だった前日のゲーム1と比べるとパフォーマンスが良くなかった。インタビューの冒頭、連載タイトルの主旨に沿って「今思うこと」を尋ねたとき、篠山はこう言った。
「自分としての課題は、やっぱりバック・トゥ・バックのこの2戦目で、どうやって自分の状態をもっとよくして試合に臨むかっていう部分ですね。今日もいいパフォーマンスができなかった。理由ははっきりしてるんです。『疲れが取れない』とかそういう単純なことではなく、『これが原因だろうな』というものはもうわかってるので、それをいかに改善できるかっていうところに意識をしっかり集中してやっていければいいかな、と」
後半、特に第4クォーターは、ヘッドコーチの勝久ジェフリーが強く説き続ける、お互いが支え合い、一つのボールを必死に守る姿勢を取り戻すことができた。オフェンスでは岡田大河がチームに火をつけ、第4クォーター開始時に14点あったビハインドが徐々に縮まっていき、残り12.1秒、岡田のアシストから津山尚大の3ポイントシュートが決まって1点になった。
残り4.9秒。69-72。川崎ボール。勝久はここで、このクォーターはずっとベンチだった篠山をコートに戻した。津山と篠山、勝負強い3ポイントシュートを持つ選手を並べてて延長戦への望みをかけた。
篠山のスローインでプレーが再開する。津山がボールを受け、ドライブからロスコ・アレンにパスを出した。アレンの放ったラストシュートはリングに嫌われ、試合終了のブザーが鳴った。

直前のタイムアウトで勝久が出した指示は、平たく言えば「津山のシュート」だった。篠山はさらにディテールを明らかにした。
「1番の理想は、僕からショウタにパスが入った時点でキャッチ&シュート。ただ、ショウタとは『とは言えまだ5秒ある。もし守られてもドライブすれば一瞬ボールウォッチの時間ができる。他が合わせてスリーが打てる可能性もあるからよく見ておいて』と話をしていました。ショウタが打てるなら打つ。打てなくてもアタックしたらもう1回誰かに合わせられるよね、と」
ペイントエリアにポジショニングしていた津山は、ゲーム再開のホイッスルが鳴るとエマニュエル・テリーのスクリーンでマークマンの岡田侑大を剥がし、3ポイントラインの上まで駆け上がり、アレンのスクリーンを使って左サイドの0度で篠山からのパスを受けた。篠山は右側のサイドラインから津山を目掛けて猛然と走った。津山が打てなかったら自分が打つと決めていた。
アレンを守っていたコティ・クラークが津山の前に立ちはだかる。津山はリングに突っ込む。ここまでは篠山の思惑通りだった。しかし、篠山が埋めるはずだった津山のスペースに先にたどり着いたのはアレンだった。
「僕とロスコのプレーが被っちゃったのは反省ですね。『お前は動かなくていい』と言っておけばよかった」
篠山はそう言った。

***
インタビューを終えると、後ろからぱたぱたと小さな音がした。ユニフォームをまとった篠山家の三男……かつてクラブハウスで益子拓己(現福島)にミルクを飲ませてもらっていたあの赤子が駆け寄ってきた。
「れいちゃん」
篠山はそう言って愛息を抱き上げ、我々の後方で取材が終わるのを待っていた家族のもとへと向かう。メディアやファンがよく知る、サービス精神旺盛な男はそこにはいない。三兄弟の父ちゃんは特に何を言うでもなく、ゲームに興じる長男と暴れる次男の様子を静かに見守っていた。