FOOTBALL

鈴木唯人×松木玖生 | 高校生たちに届けた言葉

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photo by Kazuki Okamoto / text by FERGUS

雨上がりの東京・原宿。欧州でのタフなシーズンを終えた鈴木唯人(23)と松木玖生(22)が、NIKEのサッカースパイク「PHANTOM 6」のローンチイベントに登場。会場には、修徳高校、桐光学園高校、市立船橋高校の選手たちも招かれ、ふたりは自身の高校時代やプロでの経験を交えながら、勝負強さの磨き方や日々の練習への向き合い方など、未来のプロを目指す若き選手たちへリアルな言葉を届けた。

とくに市立船橋の選手たちにとっては、憧れの先輩を目の前にしたかけがえのない時間。今季、プレミアリーグ未勝利、インターハイ予選もベスト8敗退と苦境が続く中、その言葉は、チーム再起への“スイッチ”となるかもしれない。

「筋トレ」と「自主練」――高校時代に培った基盤が今に活きている

松木選手がまず強調したのは、筋トレの習慣についてだ。

「高校時代はずっと筋トレをしていました。青森山田と市船ではチームのスタイルが違うので、どちらがいいとか言葉で説明するのは難しいんですけど、筋トレはプロになった今でも活きていると感じています」

一方、鈴木選手は、自主練の自由度が高かった高校時代を「やればやるだけ上手くなる時期」と振り返る。自身の長所だけでなく、短所にも向き合いながらトレーニングに励んでいたという。

「僕の同期に畑大雅(現・湘南ベルマーレ)がいて、彼はすごく真面目でストイックなタイプでした。毎朝チャリで猛スピードでグラウンドに向かって、どっちが先にチューブトレーニングを始められるか、みたいな小さな積み重ねにこだわってましたね」

松木選手もまた、「年代を引っ張っていく立場」として、チーム内で誰よりも練習する意識を常に持っていたという。

サッカー以外で“高校時代にやっておけばよかったこと”

高校時代を振り返る中で、鈴木選手は「オンとオフの切り替え」と「食事の重要性」にも言及した。

「しっかりリフレッシュして、オンとオフのメリハリをつけることはすごく大切だと思います。そして、『ごはんをちゃんと食べること』。これは基本だけど、本当に重要ですね」と語る。

続けて松木選手も、自身の考えを交えて食事の大切さを語った。

「最初はとにかく量を食べること。その後に質を整えていけばいいと思っています。体のつくりは人それぞれなので、誰かのやり方をそのまま真似してもうまくいくとは限りません。だからこそ、高校年代のうちに自分の体と向き合って、ちゃんと理解しておくことが大事だと思います。無理に人に合わせようとしてケガをしてしまうケースもあるので、自分に合ったやり方を早いうちに見つける必要があると感じています」

勝負強さの源は「日々の積み重ね」

勝負強さの話題に移ると、両選手の回答は一致した。

鈴木選手は「毎日のトレーニングやメンタルの準備、そういう日々の積み重ねが結果につながる」と語り、松木選手も「積み重ねがすべて」と力強く同調した。

松木選手は高校3年時に「3冠する」と公言したことで、自らにプレッシャーを課したという。

「口にしたからにはやり遂げないといけないという自分自身にプレッシャーを与えながら、レベルアップすることも大事かなと思っています」

プロの世界で感じた違いと“運を掴む力”

プロ入り後の環境の違いについては、松木選手が「プレーの強度も、ファンの前でプレーする感覚も高校のときとは全く別物かな」と語る。

「幸いなことに1年目から試合に出させてもらって、コロナ禍ということもあって運良く開幕スタメンのチャンスが巡ってきて、そこから監督が自分のことを使ってくれて、そういう運が誰にでも転がっていることを認識してほしいと思います」

その流れで振り返った「高校時代にやっていてよかったこと」は、やはり“筋トレ”。

「継続して試合に出続けるには、1シーズン戦える体が必要。それは高校時代に作っておいて本当に良かったと思います」

鈴木選手も、プロ1年目は練習に参加すらできず、グラウンドの横で一人トレーニングしていたという。

「それでも、やっぱり見てくれている人はいるんだなと感じました。たとえ監督が見ていなくても、アシスタントコーチやフィジカルコーチは必ず目を向けてくれていて、日々コツコツ頑張っている姿をちゃんと見てもらえていたんです。ちょうど同じポジションの選手がケガをしていたこともあって、コロナの中断明けから試合に出させてもらうことができました。そういう経験を通して、『運を掴むには、日々やることをしっかりやっておかないといけないな』と実感しました。」

初めてプロ練習に参加したときの“手応え”と入団を決めた理由

鈴木選手は、清水エスパルスに練習参加した日を「めちゃくちゃ楽しかった」と振り返る。

「ここで活躍できるっていう感覚があって。それでエスパルスに入ったんですけど、もちろん非常にレベルの高い選手もいました。ただ、それが逆に自分としてはやりやすかったという印象がありました」

一方、松木選手はFC東京には練習参加をせず、入団したという。

「本当は高校を卒業して海外に行きたかったんですけど、それはちょっと違うなと思って。そのときにFC東京が熱心に声をかけてくれて、自分もその気持ちに応えたいという思いで入団を決めました」

実際に練習参加した時は、ちょうど監督が変わってチームが新しくなっていたタイミングだったので、『一番アピールしてやる』という気持ちは強く持っていました。長友さんとか森重さんとか、名前のある選手もたくさんいて、そういう選手たちに対して怯えるというよりは、逆にどんどん当たっていくようなコミュニケーションを意識していました」

言語と異なるプレースタイル

海外での言語について、鈴木選手はこう語る。

「(言語を)しゃべれた方が間違いなくいいっていうのはあります。でも、逆に喋れないのも面白いかなって最初は思っていて。その壁にぶち当たった方が、自分の中で何か生活が変わるんじゃないかなって思っていたんです。だから、何も勉強せずにフランスに行きました」

当時、同じチームには川島永嗣選手が在籍しており、大きな支えになったという。

「川島永嗣さんがちょうど同じチームにいらっしゃったので、いろいろ助けてもらったり、教えてもらいながら過ごすことができました」

一方で、松木選手はトルコリーグでのプレー経験に触れ、その特徴的なスタイルについてこう話す。

「トルコリーグは、人につく守備が多くて、マンツーマンの状況が多いリーグなんです。日本人は結構連動して動くところがあるし、日本代表もそういうのを意識していると思うんですけど、トルコでは1対1の場面が多くて。だから、ボールを出して次に動いたとき、相手がついてこないようなシーンもあって。そういうところの方が、逆に自分には合っていて、ストレスもなくプレーに入っていけたし、しっかり通用できたと思います」

最後に、高校生たちへメッセージ

「コーチは時に厳しいことを言うかもしれませんが、それでも必ず見てくれていますし、チャンスというのは本当に、どこにでも転がっていると思うので、だからこそ、どんなに苦しいときでも、諦めずに頑張ってほしいです」 – 鈴木唯人

「大切なのは、『自分が一番やらないといけない』という意識を、自分自身で持って、その環境を自分でつくること。他人を気にするのはもちろんあると思うんですけど、まずは自分の芯をしっかり持つことが一番重要だと思うので、そこは必ず成長ができると思うので、そこを貫いてほしいなというふうに思います」 – 松木玖生

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