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サッカー観戦を楽しむために「まずは心構えから」 | 人気解説者・林陵平のサッカー観戦術

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photo by Kazuki Okamoto / text by Kazuki Okamoto

「サッカー観戦初心者の人からコアなファンまで、今まで以上にサッカー観戦を楽しくする」

林陵平さんが語る、サッカー観戦術の話。

サッカー解説者としてファンから人気を集め、多忙を極める林陵平さん

月に100試合見ても飽きない

現在、林さんは解説者としてサッカーファンからも絶大な信頼を集めており、声を聞かない週末はないという印象があります。具体的にどのようなスケジュールを過ごしているのでしょうか?

基本的に1日中、暇さえあればサッカーを見ています。朝起きたらサッカーを見て、移動中の電車の中でもサッカーを見ています。周りの人にスケジュールを話すと『寝てないでしょ』『試合を見る時間ないでしょ』って言われるんですけど、たしかにあまり寝てはいないのですが、それが自分の楽しいことというか、本当に好きなことなので全く苦ではありませんし、むしろ天職だなと思っています。

今回出版される本の表紙の撮影日も、DAZNでの収録を終えてほぼ寝ずに来られていましたよね。月にどれくらいの解説を担当されているのでしょうか?

12月は予定を詰め込みすぎたのですが、21試合の解説をやりました…(苦笑)1月はアジアカップがあるので少し前後するかもしれないですが、現時点で15試合です。サッカーを観るという好きなことが仕事となり、本当にありがたいなと感じています。

現役時代から、引退後は解説者としての道を意識されていたのでしょうか?

現役の時はプレイヤーとしてサッカーに集中していたので、そこまで意識はしていなかったです。ただ、サッカーマニアであることは知られていたので、その縁もあって現役中にJ SPORTSさんから解説のオファーをいただきました。引退して1年目は東大サッカー部の監督だったこともあり、解説の本数はそこまで多くなかったのですが、2年目から本格的にお仕事をいただくようになりました。今は解説業をしつつ、月に100試合以上サッカーの試合をフルタイムで見ているのですが、全く飽きないですね。

サッカー観戦における心構えまで書いている本は珍しい

今回出版される本についてお聞きしたいのですが、どのようなきっかけで出版されることになったのでしょうか?

収録現場の関係者や周囲の方々からも『サッカーの見方が面白い』と言われていたこともあって、いつかサッカーの観戦についての本を出してみたと思っていた矢先に、平凡社さんから出版のお話をいただきました。

今回の本ではどのような内容となっているのでしょうか?

サッカー観戦をより楽しむためのすべてが網羅されています。サッカーの戦術について深掘りしている本はたくさんありますが、サッカー観戦における心構えまで書いた本は珍しいと思います。サッカーをどのように見るのかという部分もありつつ、サッカーを観る際の準備や心構えについても触れられています。初心者から普段サッカーを観ている方まで、どんな方にもおすすめの1冊です。

サッカー観戦における「心構え」について具体的に教えていただけますか?

まず、サッカーを観る上での大前提として、選手が好き、プレーが好き、チームが好き等サッカーの楽しみ方は人それぞれ自由でよいと思っています。その中での心構えというのは、試合を観る前に行うべき導入部分のことです。たとえば、選手名鑑で選手を覚えることもそうです。また、選手のSNSをチェックしてから試合を観るのもすごく良いと思います。これらをしっかり把握した上で、試合のレギュレーションや各大会の特徴を確認し、チームの戦術や90分間で注目すべきポイントについて理解してくことで、サッカー観戦がより楽しくなると思っています。初心者の方からすると、サッカーをいきなり90分間も観るのはハードルが高いじゃないですか。その点をこの本で分かりやすく説明しています。

今、注目すべき選手は…

林さんは過去に2冊本を出版されていますが、今回の本との違いを教えていただけますか?

1冊目はサッカーに関する豆知識や選手の特徴を扱い、2冊目は技術や戦術に特化したサッカーに関する実用書ですね。そして、3冊目となる今回の本では、サッカー観戦をより楽しくするための要素を紹介しています。それに加えて、僕が解説している中で大切にしている部分や90分間で観るべきポイント、各ポジションやシステムの特徴、今後注目すべき選手についても触れています。また、SNSが面白い選手の紹介もしているのですが、この本ならではの特徴だと思います。

林さんからみた「今、注目すべき選手」は気になりますね…1人だけ教えていただけますか??

今30人くらいリストがあるのですが….うーん、迷いますね(笑)1人となると、スポルティングに所属するセンターフォワードのギョケレシュですかね。スポルティングなので日本代表の守田選手と一緒のチームに所属しています。そろそろ5大リーグに移籍するんじゃないかなと。フィジカルも強いし、スピードもあるし、ゴール前のテクニックもシュートも上手い。何でもできる万能型のストライカーですね。みなさん要チェックです!

アジアカップで守田が披露したゴールセレブレーションはギョケレシュと約束を交わしたとされている

サッカーを見る側のレベルも向上させていきたい

林さんにとって、今回のように本を出版する意義とは何でしょうか?

まず、「本を出したい!」と言っても、平凡社さんのような出版社のサポートがなければ難しい部分もあるので、本当に感謝しかありません。今回お話をいただいた時は、東大の監督を務めながら解説も行っていたので、時間がほとんどなかったのですが、サッカー観戦に関する本を出版したかった理由の一つに、今では選手が当たり前のように海外に移籍し、日本代表のレベルが上がっている中で、サッカーを見る側のレベルも向上させないと、日本のフットボール全体が進化していかないと感じていたこともあって、出版することになりました。

昨年末に東大の監督を退任された林さんですが、さいごに、2024年はどのようなことを意識して活動されていくのでしょうか?

今年はS級ライセンスの取得を目指します。現時点でS級の日程が未定なので、何とも言えないのですが、解説の仕事も求められる限り続けていきたいと思っています。最近では林陵平の解説を楽しみにしてくれる方もいらっしゃるので、その期待に応えるために、選手目線を持ちながらも、マニアックなファン目線で、まるでそのチームのファンであるかのような準備をして解説に臨みたいと思っています。

林陵平のサッカー観戦術 試合がぐっと面白くなる極意

著: 林 陵平
出版: 平凡社
発売日: 2024年2月15日
Design: Ayako Suzuki
Photo: Kazuki Okamoto

PROFILE

林 陵平
林 陵平
1986年生まれ。東京都出身。ジュニアからユースまでヴェルディ下部組織育ち。高校卒業後明治大学に進学。2009年に東京ヴェルディに入団。2010年に柏レイソルに完全移籍し、2012年にモンテディオ山形(期限付き移籍)、2017年に水戸ホーリーホックへと移り、2018年に東京ヴェルディに復帰。その後、FC町田ゼルビア(期限付き移籍)、東京ヴェルディ、ザスパクサツ群馬(期限付き移籍)に移籍し、2020シーズンをもって現役を引退。引退後はサッカー解説者となる。2021年に東京大学運動会ア式蹴球部の監督に就任。2023年シーズンをもって退任した。Jリーグ通算300試合67得点。JFA A級コーチジェネラルライセンス取得

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