この度急ではありますが、田代くんの連載を一旦終えるということで、これまでありがとうございました。
ありがとうございました。一旦「休憩」みたいな感じですね。
そうね、「休憩」としておこうか。率直に今の心境はどうです?
北米に来てからの3シーズン目が終わったんです。思えば23年4月にLAに行って、最終的にLAFCとの契約までは行けなかった。そんなときにカズキくんがFERGUSを立ち上げますって声をかけてもらって、自分の考えだったり、ただの日常を書きつづけて面白がってくれる人もいてすごくありがたかったなと思います。考えの整理になるし、すべてをさらけ出すのがいいとは全く思わないけど、ぼくとカズキくんの関係値の中でなにか立ち上げ期にひとつでもアクセスを増やすことができればなとは思っていたので。そうやって人生で最もカオスだった期間を一緒に歩んできたなって、いま率直に感じています。
僕らも当時は立ち上げ時期で本当に何にもなかったんで。そんな時に田代くんがアメリカに行くと聞いて、連載させてほしいってオファーしたのが懐かしいです。今では「毎月田代さんの連載をみています」って周りからも言われるようにまでなったけど、実際アメリカ、カナダに行く前と今で、考え方等、大きな変化はありましたか?
おおきく変わったとは思わないですけど、(技術の)上積みはあると思います。ぼくの仕事って派手なことを派手なままお届けできるんですよね。例えば直近であったadidas Japanさんの動画みたいに、目の前にはスター選手がいて、派手な編集で動画を作ってドーンと世に出ていき、それに対して国内外から評判をいただく。そういうものが求められるじゃないですか。
そういう制作にまつわるノウハウを得たっていうのはもちろん大きい一方で、キャリアのほとんどをフットボールクラブで過ごしているぼくの見え方では、国外に出たとてやっぱりフットボールは地域とどう共存するかっていうところが面白いポイントであるし、コミュニティの代表格、地域コミュニティの代表格に容易になり得るとこの目でみることができた。実際に見たこと。情報量より説得力が企画を進めていくであろうこの時代で、この経験より価値の高いことはないと思います。しかも日本語の情報なんて皆無だった場所ですし。
Jリーグなら毎週2万人、3万人と観客が集まると思うんですけど、そんな集客力の団体って限られていると思うし、それはうちの島でもそうで、3千人、4千人が集まるイベントなんてそう多くないわけですよ。っていうところを客観的にみて、クラブとしてなにが地域にできるのか、むしろ地域のどの要素をクラブのパワーとして付けていけばいいのかっていうことをやっぱり一番考えつづけた生活だったのかなと思います。
振り返ってみると、2年半に及ぶ連載でしたけど、あらためて「休憩」しようと思った理由について教えていただけますか?
アウトプットをしつづけることは大事なことだと思うんです。でも、ぼくのスタイル的に年1回から2回のスケジュールで大きくて深いものをしっかり考えて発表するのが自分には合ってると思っていて。もちろんフェイムとか、フォロワー数を得るのであれば、毎月それなりの規模のものをちょこちょこ出していくっていう方がいいと思うんだけど、そんなことやっていても飽きる気がする。おおきい企画をやった後の振り返りを自分で書くことは有意義だなとは思う一方で、プロセスエコノミー丸出しの連載って読んでいる人も面白くない部分があるかなとも思うし、あまり好まないコミュニケーションかもしれない。このメディアも徐々に大きくなってきたと思うから、ちゃんとした味のするものを出していく方が、次のぼくとカズキくんの関係的にはいいのかなっていうところでの「休憩」ですね。だから全くネガティブではないし、別に今のまま毎月書いてくださいって言われたら続けられるとはおもうんだけど、まあちょっとそういうことも考えてみようかなと思っての今ですね。
そうだね、この連載きっかけでFERGUSを知ってくれた人も多いからね。本当に嬉しい限りです。ちょっと話は変わるけど、今は個人がメディアにもなれる時代じゃないですか。SNSやnoteで発信したり。むしろこの連載も別にガクくんのnoteとかで書くこともできたわけじゃないですか。そういった意味で、媒体(メディア)っていうフィルターを通して発信することの良さや個人で発信することとの違いを教えていただけますか?
どこまでいっても個人が自分で発信するよりも、誰かに面白いと思ってもらって取り上げてもらうことの方が、価値が高いと思っているんです。それは時に編集されるかもしれないし、時に(メディアの)バイアスをかけられるかもしれないんだけど、自分が考えてることを自分でそのまま発信するハードルが下がったからこそ、その価値と信ぴょう性も下がってきている気がするんですよね。こういう記事なら自分の体験したことを棚下ろすよりも、ハネたトピックをこすり続ければいいし、みたいな。ぼくが子犬なら上目遣いでエサたべるし、みたいな。なんだけど、これは自分がもっとも大切にしていることとして、周りの人と一緒に成り上がって、大きくなっていくっていうところに喜びを感じるから。だからカズキくんに編集してもらうっていうのが大事なんです。
この連載が一旦終了するということは、田代くんがこの後何か動き出すんじゃないかって思う人もいると思うのですが、言える範囲で今後の展開を教えていただけますか?
クラブとの契約がパーマネントなので、いようと思えばいられる、ものすごくありがたい状況にいます。でも同時にこのあたたかい環境を目指して日本を出たのかといわれたらちょっとどうかなみたいな。カナダ代表の映像チームで撮影ができていること、このあとなにが自分としてほしいかを考えたときに、どこにいることが最善なのかっていうのを含めて、もう一回考え直します。ただ、クラブに不義理だけはしないってくらいですかね、いま考えていることは。
この連載は休憩って言ったのが、今後不定期で配信は行っていくかもしれないということと、あとはオフラインイベントをやりたいなと。同業者の方だったり、これからガクくんみたいに現地でクラブスタッフとして働くことに興味のある人とか、そういった方にぜひきてほしいと思いますね。どうですか?
つまり、この連載のある意味マジ最終回ってことですよね。
まだ何にも決まってないですけど、とりあえずやるってことは決めました。
やっぱり、今は選手、監督、トレーナーさんとかが海外に行く中で、日本サッカーがここからさらに大きくなるためには、クラブスタッフの人が海外に出ることがすごい重要なことだと思っていて。要はカメラマンとかつくる側って作品で勝負できる部分もあるけど、クラブスタッフって、何て言うんだろう、結構難しいじゃないですか。川崎フロンターレにいたとか、こういうプロジェクトをしましたみたいな実績があるにせよ、言語も違う環境でコミュニケーションを取ってプロジェクトを動かしていくって、ある意味超ハードル高いと思っていて。ガクくんに続いてそういう環境に行きたいって思う方たちが出てきて、数年後それをまた日本に持ってきて還元することがまた新しい発展につながるんじゃないかなと思っていて。キャリアのことももちろん話しながら、あの時やばかったみたいなとか、細かいことで言えばビザはどうしていたのかとか、それも個人的に聞きたいかな。
ぜひ、Xに書いたらすぐに社会から抹殺されるエピソードを持っていきます。
では、締めです。約二年半、ガクくんにとってどんな連載でしたか?
まずは文章を書く機会を調子のよくない時期にいただけたこと、本当にありがとうございますっていう気持ちがあります。普通は調子のいい時に書かれた文章しか出ないわけじゃないですか。あらためてLAにいた時のやつを見返すと、半分くらいNETFLIXを家で見てるみたいな時がある。そんな中にキエッリーニと試合をみた日があったり、そんな想像もできない出来事たちが鮮明に脳裏に焼き付いてたりするから、そういうものが残せて良かったなと思います。ほかの人のことを考えてやっているわけでないので一概には言えないけれど、もしこういうのを見て自分も行動してみようって思う人がいるのであれば、きっとうまくいくと思うし、まずはひとりで頑張ってみた方が楽しいよって思いますね。だれも知らないところでだれよりも知っていることを探すことが尊いじゃないですか。とにかく、ここまで本当にありがとうございました。