FOOTBALL | [連載] 鎌倉デザイン室

鎌倉デザイン室vol.2 | Tomoya Onuki

interview |

text by Kazuki Okamoto

我らが鎌倉インターナショナルFC(以下、鎌倉インテル)のインハウスデザイナーであるTomoya Onukiさんをゲストに迎えた企画『鎌倉デザイン室』。

第2回目となる今回は、2023年シーズンに制作した作品を振り返ります。(第一回目の記事はこちらから

流行にとらわれすぎていた

率直に2023年シーズンにご自身が制作したグラフィックデザインを改めて振り返り、どう感じていますか?

反省と新しい発見があったシーズンとなりました。

なるほど。具体的に教えていただけますか?

昨シーズンは前期リーグと後期リーグに分かれているのですが、前期リーグのクオリティには全く納得がいっておらず、後期リーグはその点を修正できたので手応えを感じています。

前期リーグの反省点とはどういった部分でしょうか?

流行にとらわれすぎていた傾向が強くて…「こういうデザインが流行ってるから組み合わせてみよう」みたいなアプローチだったんです。2022年シーズンは淡白かつホワイトベースのデザインだったので、例えば「NEXT MATCH」の文字の入れ方においても特徴的なフォント使ってみたり、独自性のあるデザインにしようと思っていたんですけど、結果として流行のデザインを単に組み合わせただけで、何を表現したいのかが十分に伝わらないグラフィックに仕上がってしまったと反省しています。

鎌倉インテルは前期リーグを首位で折り返し、後期リーグに向けて中断期間が1ヶ月程度ありましたよね。その期間でどういった修正を行ったのでしょうか?

後期リーグでは、前期リーグの上位6チームが一堂に集結し、その中から2チームだけが関東社会人サッカー大会(関東2部リーグ昇格に向けたトーナメント)に進出できます。社会人サッカーとはいえど、各チームがしのぎを削り、激しい戦いが繰り広げられます。激しい戦いに着目し「このデザインを燃やしてみれば、デザインの意図がより伝わるのではないか」との発想から、炎をモチーフにデザインに取り入れてみました。

前期リーグのグラフィック
後期リーグのグラフィック

肌に赤みを加えたことで、印象が大きく変わりましたね。

はい。コンセプトに基づいた炎のようなエフェクトを一つ加えるだけでも、前期リーグよりグラフィック全体に雰囲気が出ました。これを元にスターティングイレブンのグラフィックも見直したことでグラフィックの世界観がまとまり、クオリティもかなりアップしたんじゃないかなと思っています。これまでシーズン途中に修正することはできていなかったので、自分にとって大事な一歩にもなりました。シーズンの最初からやれよって話でもあるのですが…(苦笑)

テーマやコンセプトをしっかりと持ち、ちょっとした遊び心のある表現を大切に

2023年シーズンだけでも多くのグラフィックを作成されたと思いますが、その中で思い入れのあるグラフィックを教えていただけますでしょうか?

第一回の記事でもお話させていただきましたが、やはり内藤洋平選手のグラフィックは欠かせないです。単純に反応が良かったという理由もありますが、今まで制作したデザインの中でも独特の世界観を表現できている手応えがあります。

具体的には、洋平さんの人物像やキャリアまでをイメージしながら、デザインすることができました。何となく組んだデザインではなく、テーマに沿ってうまくデザインに落とし込むことができれば、世界観が確立されたグラフィックが生まれると再認識しました。

皆既日食を連想させた光(中央部分)はコンセプトである「輝き」を表現する等、緻密にデザインされている

そういった意味で言うと、大晦日に出したグラフィックも同じで、スタジアムのゴール裏をテーマにすること自体あまり見たことがないアイデアだったので、「やってみたら面白いんじゃないか」ってずっと思っていて、既存のスタジアムを持っているチームであればなかなか難しいですが、鎌倉インテルのようなこれからスタジアムを持つ可能性のあるチームにはぴったりだと感じました。

サポーターがタオルマフラーを掲げている様子や、ゴール裏がテーマなだけに、サッカーが好きな人には刺さりやすいデザインだったので、インスタグラム上でも反応が良かったです。鎌倉インテルの今の状況や可能性を考慮し、今の鎌倉インテルだからこそつくれる世界観を表現できたと思います。制作にはかなりの時間がかかりましたが、その分に見合うクオリティや独自の世界観を表現できたことは大きな成果だと感じています。

このグラフィックを通じて、テーマやコンセプトをしっかりと持ち、ちょっとした遊び心のある表現を大切にして、毎回自分の世界観がしっかりと表れるようなグラフィックを作りたいと思っています。洋平さんのグラフィックと大晦日のグラフィックは、僕にとって今後の指針となるデザインになったと感じています。

ちなみになのですが、大晦日のグラフィックの制作時間はどれくらいだったのでしょうか?切り抜きの数も多いですし、相当な時間がかかったと見受けられるのですが…

仰る通り、30人くらいの切り抜きは特に大変でした…10月くらいにイメージ作りをはじめ、着手し始めました。他の作業と並行しながらだったので2、3ヶ月かかりましたが、手を動かした時間だけをぎゅっと集めると丸1週間くらいですかね。でも、制作していてすごく楽しかったです!めちゃくちゃ大変でしたけど…(苦笑)

コンセプトを置き、世界観をつくる

最後に、2024年シーズンのグラフィックはどのようなイメージを持っていますか?

このクラブの創設期から携わっている自分だからこそできるデザインにしたいですし、しっかりとコンセプトを置き、世界観をつくることはかなり重要だと思っています。
今はまだ完璧ではないですけど、そのあたりを追求できるデザイナーでありたいです。

Tomoya Onukiが2023年シーズンにデザインした作品はこちらから。

試合発信① Next Match
試合発信② Match Day
試合発信③ Starting XI
試合発信④ Match Result
試合発信⑤ 順位表
試合発信⑥ スケジュール
05.28 FCグラシア相模原戦 試合告知
06.25 品川CC戦 試合告知
07.02 上位リーグ進出
07.09 イトゥアーノFC戦 内藤洋平バースデイゴール
07.16 神奈川教員SC戦 金城光希ゴール
08.06 カンボジア遠征 キービジュアル
08.07 スタッツ アシスト①
08.07 スタッツ アシスト②
08.07 スタッツ ゴール
09.24 イトゥアーノ戦 試合告知
09.30 JR駅ポスター キービジュアル
10.01 海上自衛隊厚木基地マーカス戦 試合告知
12.31 2023シーズン終了

PROFILE

Tomoya Onuki
Tomoya Onuki
デザイナー。現在フリーで活動中。大学在学中に参加したアンコールタイガーFC(カンボジアプロリーグ所属)のインターンにてデザインに触れを制作を始める。その後、鎌倉インターナショナルFCに出会い、2020シーズンより主にデジタル・印刷類のクリエイティブ制作を担当。

PROFILE

鎌倉インターナショナルFC
鎌倉インターナショナルFC
神奈川県社会人1部リーグ所属のサッカークラブ。『CLUB WITHOUT BORDERS』をビジョンに掲げ、日本と世界を隔てる国境をはじめ、人種や宗教、性別、年齢、分野、そして限界、あらゆる“BORDER”をもたないサッカークラブを目指す。

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