BASKETBALL

「ファミリー」になる日:2024-2025SEASON 川崎ブレイブサンダース出陣式

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photo by Kazuki Okamoto / text by Reiya Kaji

残暑厳しい9月8日。気温32℃を超える中、ラゾーナ川崎に約1,000人のファンが詰めかけた川崎ブレイブサンダース、2024-2025シーズン出陣式。

昨年B1リーグ中地区4位で終えた川崎ブレイブサンダースは、コーチ陣を一新。選手も大幅に入れ替え今シーズンに臨む。12年に渡りチームを支えてきた、ニック・ファジーカスの引退後に迎える初めてのシーズンでもある。

と、ここまで訳知り顔で書いてしまったが、川崎ブレイブサンダースさんの取材をさせていただくのはこの日が初めてだった。「出陣式」なるものが何かも分かっていなかった。開幕前に集まってみんなで頑張ろう、という決起集会的なものかな……と想像しつつ、川崎に向かった。

「今年はめちゃくちゃ走ります!」

定刻通り、16時45分に式はスタート。アリーナMCの続投が発表された高森てつ氏の挨拶から始まり、チアリーダーズ「IRIS」のパフォーマンス。今季から新メンバーを含めた12名での活動になる。

そして会場後方から、揃いのスーツを身に纏った選手たちが現れた。ブレイブレッドのネクタイが、夕空に映える。高森氏のアナウンスよりも先に気づいたファンが一斉に手を振り、カメラを向けていたのが印象的だった。

新しく入団したメンバーの挨拶の後、それぞれが今季にかける意気込みを語った。会場が温かい空気に包まれたのは、#17 飯田遼にマイクが渡った時。「自分じゃ言いづらいと思うんで」と、この日誕生日を迎えた #12 野﨑零也へハッピーバースデーを歌おうと呼びかけ、約1,000人の大合唱に。野崎からは声が小さい!と言わんばかりのジェスチャーも見えたが、表情は笑顔だった。

 「今年はめちゃくちゃ走ります!」という力強い宣言で沸かせたのは、#18 鎌田裕也。今年34歳になったベテランパワーフォワードの言葉と思うと、歓声が上がるのも頷ける。変化の多いシーズン故、ベテランの力は重要になる。

この日はキャプテン・副キャプテンも発表された。昨年に引き続き、キャプテンは #7 篠山竜青。キャプテンを務めるのは通算10シーズン目となる。

「変化を恐れずに新たなチャレンジをしていくべき部分、大事にしていかなければいけない部分をチーム全員と共有しながら、クラブとしての新たな歴史の一歩を踏み出せるようにチーム作りをしていきたいと思います。チームのためにハードワークできる、リーダーシップをとれる選手ばかりが集まってくれたので、いい意味で気が楽。全員でいいチームを作っていけると思っています。一緒に戦ってください!」

副キャプテンには #33 長谷川技。 

「新体制になって、うまくいかないことも勝てないこともあると思う。そういう時こそ、ファミリー一丸で頑張りたい。これからの川崎ブレイブサンダースの土台となる部分を全員で作っていきたいです」

この日発表された今シーズンのチームスローガン「BE BRAVE 変化に常に勇敢であれ」を象徴する、力強いコメントだった。

「出陣式」とは

式中、壇上のメンバーの口から何度も出てきた言葉が「サンダースファミリー」。ファンでもお客さんでもブースターでもない。「ファミリー」だ。クラブ公式動画で「Bリーグ発足当初にラゾーナ川崎で開催したイベントは閑散としていた…」と振り返る篠山の言葉を聞くと、このチームが時間をかけて川崎の街でファミリーを増やしてきたことがわかる。試合があるわけでも冷房が効いているわけでもない、ひたすらにチームが意気込みを語るイベントに約1,000人が詰めかけることは、当たり前のことではない。

今年は5名の新加入選手と、新ヘッドコーチ含め3名のスタッフがチームに加わった。開幕を前に川崎の街に支えられている実感を持ち、自分の声でファミリーにあいさつをし、チームの一員となる。「出陣式」とは、ラゾーナ川崎であの時間を共有した人々が「ファミリー」になるためのセレモニーなのかもしれない。

式の締め、ファミリーに向かって篠山はこう呼びかけた。

「今日はありがとうございました。ラゾーナ川崎でごはん食べて、お金を落として帰ってください!BE BRAVE!」

変わっていくものと、変わらないもの。どちらもたくさんあるからこそ、ファミリーはとどろきアリーナに足を運び、声を枯らして応援し、試合結果に一喜一憂するのだろう。

プレシーズンマッチは、9月14日(土)から始まる。

PROFILE

梶 礼哉(Reiya Kaji)
梶 礼哉(Reiya Kaji)
北海道江別市出身のフォトグラファー / ビデオグラファー / ライター。小樽商科大学在学中の2017年、ドイツ野球ブンデスリーガ傘下(地域リーグ)バイロイト・ブレーブスでプレー。MAX100km/hの直球と70km/hのカーブを武器に投手としてそこそこの活躍を見せる。卒業後、紆余曲折を経て株式会社ワンライフに所属。FERGUSでは撮影とインタビュー・執筆を担当。

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