
第45回日米大学野球選手権大会、第5戦。緊迫した1点差ゲームを見事にものにし、6-5で侍ジャパンが勝利した。
これまでの4戦で4連勝しており大会の優勝自体は決まっていたものの、全5試合に勝利しての優勝「完全優勝」は21年ぶりの快挙となる。エスコンフィールドHOKKAIDOでの最初の2試合は大差で日本が勝っていたが、HARD OFF ECOスタジアム新潟に移動してからの第3戦・第4戦は2-0、6-5と締まった試合に。この第5戦も、最終戦に相応しい白熱した展開となった。現場カメラのフォトハイライトを交えながら、熱戦と試合後の選手たちの姿を振り返る。
先制直後に追いつかれるも、勝ち越しは許さず

井端弘和・侍ジャパントップチーム監督の始球式もあり華々しく開幕した最終戦。日本の先発マウンドには、中5日で早稲田大学の伊藤樹。初回は僅か10球で三者凡退に打ち取り、素晴らしい立ち上がり。
その裏、日本は全試合に1番打者として出場している主将・松下歩叶(法政大)がいきなりツーベースでチャンスメイク。3番・小田康一郎(青山学院大)のタイムリーであっさりと先制点を奪った。その後も6番・渡部海の犠飛で2点目。
伊藤と同じく中5日での先発マウンドとなったイーサン・ノービー(イーストカロライナ大)を攻め立てた。


しかし、伊藤は2回にタイムリーを浴び1点を返されると、3回にはワンアウト二塁から3番・ベッカーにライトへ運ばれる。二塁ランナーはホームに生還し同点となったが、ライトの秋山俊(中京大)が好返球で三塁を狙ったロッチ・チョロウスキー(カリフォルニア大ロサンゼルス校)を補殺。


アメリカに初めてリードを奪われ、打線が奮起
試合が動いたのは5回。先発の伊藤は3回2失点で降板しており、後を受けた有馬伽久(立命館大)が2イニングス目に突入。ヒット、盗塁、暴投でツーアウト三塁のピンチを作ると、5番のザイオン・ローズ(ルイビル大)にレフト前へ勝ち越しのタイムリーを浴びた。落ち着いて後続を打ち取ったものの、3-2と今大会初めてアメリカ代表を追いかける展開に。
しかしその裏、日本は2番・榊原七斗(明治大)が三塁打。ワンアウト三塁から3番・小田の当たりが二塁手のフィルダースチョイスを誘いすぐさま同点。

その後ヒットとフォアボールでワンアウト満塁となり、打席にはキャッチャーの6番・渡部海(青山学院大)。するとまさかのパスボールがあり、1点を勝ち越し4-3。
その後も攻撃の手を緩めず、渡部が打球をライト線付近に運び、2点タイムリーツーベース。6-3と、点を取られた直後にきっちり取り返した。


一発攻勢で追い上げるアメリカ、しかし凌いだ青山学院大の2人の投手
6回からは日本は第2戦の先発・中西聖輝(青山学院大)にスイッチ。キレのある速球とスライダーはこの日も冴えており、先頭2人を簡単に打ち取った。
しかし、ヴァン・ラッキー(ジョージア工科大)のセンターへの当たりに榊原がダイビングキャッチを試みると、後逸。打球が無常も外野を転がる間に、ラッキーが激走。結局これがランニングボームランとなり、6-4に。
続く7回表には、今大会ここまでノーヒットだった2番・チョロウスキーのソロが飛び出し、6-5の一点差に。MLBドラフト全米一位候補の実力は守備では際立っていたが、バットでもようやく鮮烈なインパクトを残した。


しかし中西は動揺せずに後続を打ち取り、試合が動き始めた6回〜8回の3イニングスを2失点で切り抜けた。



9回には鈴木泰成(青山学院大)が登板。先ほどホームランのチョロウスキーから三振を奪うなど、安定感と破壊力抜群の投球で試合を締めた。投打共にコンディションが上向いてきていたアメリカ代表相手に何度もピンチを招き実際に点数も奪われたが、初戦から続く集中打とミスに乗じて点を奪う攻撃と、要所を締める投手陣の活躍で見事に全勝優勝を達成した。
歓喜、そしてノーサイド
最終戦ということもあり、試合後には閉会式が行われた。表彰や挨拶が終わると、集合写真撮影や両国の選手がグラウンドで健闘を称えあう時間となった。


「アメリカ代表は時差ボケによるハンデがあるし、3・4年生が出場していない」などと選手層の厚さや国としての本気度の違いについて指摘されることも度々ある。しかし、日本とアメリカの若いトッププレイヤーたちが本気で戦った結果生まれたものの大きさは、今この瞬間に測れるものではない。そう遠くない未来、彼らが日本プロ野球、メジャーリーグ、WBCで相対した時、また新たな感動が生まれるに違いない。
キャプテンの松下が「最高で最強のチームだった」と自信を持って評したチームは、これで一度解散となる。選手たちはそれぞれの所属チームに戻り、秋のリーグ戦で輝くためまた準備を重ねていく。

表彰選手
最高殊勲選手:松下歩叶(法政大学)
主将としてチームを鼓舞し、1番打者としても5試合で打率.318・5打点を記録
最優秀投手:毛利海大(明治大学)
1・2試合目はリリーフ、3試合目は先発で登板。計7イニングスを無失点に抑える好投

首位打者:秋山俊(仙台大学)
4試合に出場し14打数で6安打、打率.429を記録。

敢闘賞:クリス・レンバート(オーバーン大)
アメリカチーム最高打率の.278を記録、打線の牽引役となった