
学生野球の最高峰が、静かに、荘厳に幕を開けた。
6月8日(日)、東京・明治神宮会館にて「第74回全日本大学野球選手権大会」の開会式が行われ、全国26の大学野球連盟を代表するチーム・選手たちが一堂に集結。
歴史ある会場で、選手宣誓とともに“大学日本一”を懸けた7日間の物語が始まった。

明治神宮会館に響いた「決意の言葉」
明治神宮会館は、1960年代から皇族行事や国際会議にも用いられてきた由緒ある建築空間。
野球場とは異なる静謐な場で、各校主将たちが一人ひとり、戦いへの覚悟を口にした。
とりわけ印象的だったのは、東海大学九州キャンパス・江口晶大主将の言葉。
「九州大学野球連盟の記念すべき初勝利を目指そうと思ったんですけど、(目の前で青学大に授与された)レプリカの優勝旗がカッコよかったので、優勝を目指します」

“まず1勝”から“優勝”へと気持ちが変化した率直な一言に、会場の空気が和みつつも引き締まった。
また、昨年準優勝の早稲田大学・小澤周平主将は「東京六大学連盟代表として、昨年取れなかった日本一を取るために、全力で戦う」と語り、リベンジへの意志を真っ直ぐに伝えた。

長嶋茂雄さんへの追悼と、“大学野球の価値”
長谷山彰・大会会長による挨拶では、6月3日(火)に逝去した長嶋茂雄氏(立教大学OB)への追悼にも触れられた。プロ野球界のレジェンドである長嶋氏も、大学野球から羽ばたいた一人である。
「大学野球は、プロを目指す若者たちの“通過点”であるだけでなく、日本の野球界全体の裾野を広げる役割を果たしてきました」という言葉には、アマチュアスポーツとしての誇りと責任が滲んでいた。
6年ぶりの日米大学野球開催へ
長谷山会長は、今大会終了後に控える日米大学野球選手権にも言及した。
コロナ禍の影響で中止が続いていたこの国際試合は、今年7月6日(日)から6年ぶりに開催される。
舞台は、エスコンフィールドHOKKAIDO、HARD OFF ECOスタジアム新潟、明治神宮野球場の3会場。選抜された“大学JAPAN”が、再び世界と相まみえる。
既に代表チームの編成は固まりつつあるが、「今大会の出場選手からも数名の追加招集を行う予定」とのアナウンスもあった。
この開会式に集った中から、新たな日本代表の顔が生まれる可能性は高い。
「誓いの言葉」とともに、熱戦の火蓋が落ちる
式典を締め括ったのは、中京大学主将にして、MAX153km/hを誇るプロ注目右腕・高木快大投手による選手宣誓。
「それぞれのチームが連盟の代表として自覚を持ち、仲間とともに正々堂々、全力で戦うことを誓います」
その凛とした声は、会場全体に静かに、しかし確かに響いた。

決勝戦は6月15日(日)神宮球場で行われ、返還された優勝旗が再び掲げられる。明日から始まる全26試合は、勝利の先にあるもの――友情、誇り、悔しさ、それぞれの未来――を確かに浮かび上がらせてくれるはずだ。 学生野球が持つ輝きのすべてが、ここに詰まっている。
PROFILE
梶 礼哉(Reiya Kaji)
