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「一つのチームとして」 “PRE Fast Track Club” powered by NIKE & STEP SPORTS  Vol.2

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photo by Kazuki Okamoto / text by Asami Sato

点と点を繋げて線に

NIKEとSTEP SPORTSがタッグを組み、中学生と高校生を対象に中長距離種目の特別なトレーニングを行う“PRE Fast Track Club”。東京各地で桜が咲きはじめた3月下旬、スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)にて第2回目(全3回)が開催された。

17:45。前回渡されたPRE特製ウェアに身を包んだ選手たちが、トラック脇のテントに集合。それぞれの手にはノートが握られている。PREのMCを担当するSTEP SPORTSの市川寛人さんの挨拶からイベントがスタートした。

「こんばんは!第1回から1ヶ月ほど経ちましたが、みなさん意識の変化はどうでしょうか?まずはノートを使って、前回の振り返りから始めましょう」

総勢23名が5グループに分かれ、前回からこの日までの振り返りやノートの使い方などをシェアし、各グループから代表して一人がその発表を行なっていく。ある選手は次のように発表した。

「自分はその日の練習メニューと平均心拍数、最大心拍数、ピッチ、体のコンディションなどを中心に書いています。その日のピッチと調子のバランスを見ながら、練習メニューを調整しています」

各グループの発表の後、メインコーチを務めるGgoatの宮内斗輝さんから、「“6000mペース走+200m+400m”」という本日のトレーニングメニューが伝えられた。別のGgoatスタッフが次のように話す。

「次回のPREは1週間後で、3000m、1500m、800mのタイムトライアルを行います。今日のトレーニングでは、点と点を繋げて線にしよう。みんなが普段やってきたことやPREのトレーニングを、次回のタイムトライアルに繋げられるように臨んでいきましょう」

トラック脇で半円を作り、準備体操からスタート。「体のどこを意識するか。そういう部分まで考えながら体操しよう」というアドバイスを伝える宮内さんを中心に5分ほど行い、動き作りへと移行。肩甲骨やアキレス腱などに刺激を与えながらウォーキングを行なっていく。

水分補給を挟んでから、ウォーミングアップとして時計回り(逆走)でトラックを5周する。常に反時計回りにランニングすると筋肉や体のバランスを崩してしまいがちなため、アップ時の逆走はGgoatや駒澤大学駅伝部で頻繁に取り入れられているという。

5周走った後、バックスタンド側の直線までジョグし、100mのダッシュ。そのまま反対側までジョグで繋ぎ、再び直線で100mダッシュ。以上でウォーミングアップが終わり、10分間の休憩に入った。

一部の選手はジョギングに最適な“ボメロ 18”から、より長距離レース向きの“ヴェイパーフライ4”に履き替え、準備完了。ここからはABCの3グループに分かれてのメイントレーニングが始まる。

“特別な光”が導く6000mペース走

最も速いAグループの目標は、最初の2000mが1000m4分ペース、次の2000mが1000m3分50秒ペース、最後の2000mが1000m3分45秒ペースに設定された。つまり2000メートル毎にペースが上がっていく6000m走だ。

前回同様、各グループの先頭と最後はGgoatのメンバーが走ってペースを管理していくが、今回はプラスアルファで特別な試みが導入された。

「WaveLight(ウェーブライト)」という、トラック沿いに設置されたLEDのペーシングライトシステムだ。事前に設定された目標タイムに合わせてLEDが点灯する仕組みで、主にトップアスリートが参加する国際大会で利用されている。タイムを常に可視化することができるため、選手はもちろんのこと、コーチや観客も常に状況を把握することができる。また、走る選手の姿とLEDの見事なシンクロは、普段の陸上競技ではなかなかお目にかかれない臨場感を演出してくれる。

19:10、ランスタート。Aグループはグリーンのライトに合わせ、先頭の宮内さんが集団を引っ張っていく。最初の1000mは、目標タイム内の3分59秒で通過した。

「動きを崩さないように」「滅多にないこのペースライトを楽しんで!それくらい余裕を持って走ろう」などというアドバイスがGgoatメンバーから伝えられる。

2000mを超え、各グループの目標タイムがペースアップ。全グループが目標タイムを下回ることなく、安定した走りを見せている。

しかし、4000mを通過した辺りから、BとCグループには少しキツそうな表情やフォームになってしまう選手がチラホラと現れ、次第に集団が縦に伸びていく。選手を後押しするべく、Ggoatメンバーとスタッフ、そして観客席にいる選手の親御さんから、応援や激励の拍手が送られる。

Aグループはペースも集団も崩れることなく、6000mを走破。Bグループも続いてゴール。「最後の一周、自分の中のかっこいいフォームで走ろう!」というGgoat からのアドバイスを受け、Cグループも無事ゴールした。

『まだ体感したことのない速さへ』

5分のリカバリーを挟み、次は400mダッシュ。まずはAグループからスタートし、先頭集団は59秒でフィニッシュ。BCも負けじと全力疾走する。最後のメニューは200mダッシュ。A29秒、B26秒、C32秒と、それぞれの持てる力を最大限まで絞り出した。

「ナイスラン!」というGgoatメンバーやスタッフからの声がかかり、選手たちは清々しい顔を見せている。全員でトラックを3周走り、クールダウン。その後に体操を行い、この日のトレーニングが無事終了した。

再びMCの市川さんが登場し、今日の振り返りが始まる。選手たちはそれぞれのノートを使い、今日のトレーニング内容や感じたことを記入していく。その後、今日のトレーニング内容について、メインコーチを務める宮内さんが締めの言葉を伝えた。

「僕はAグループの先頭を走りましたが、お互いを励まし合う声や、コーチ陣からの声への返事が聞こえて、一つのチームとしてまとまったように感じました。

今日の練習前と練習後も含めて、このPREではせっかくノートを書いているので、習慣化してもらいたいです。陸上競技と同じで、継続することで身についてきますし、記録に直結することなので、ぜひこれからも続けていってもらえたらと思います。

来週、最後のTT(タイムトライアル)があります。みんなそれぞれの部活やレースがあるかもしれませんが、今日のトレーニングが次回に繋がっているとイメージして、この1週間を大切に過ごしてもらえればと思います」

WaveLightという最新のペースライトシステムを使い、ペース走とダッシュで走力を着実に強化。そして、その内容をしっかりとノートに書き込み、振り返りながら次に繋げていく。タイムトライアルに向け、非常に中身の濃いトレーニングになったのではないだろうか。

そういえば今回の会場には、二つの大きなバナーがメインスタンドとバックスタンドに掲げられていた。そこには次の言葉が書かれている。

『自分史上最速のレースに向けて 準備はいいか』

『この一瞬の苦しさを乗り越えれば まだ体感したことのない速さへ きっと辿り着ける』

1週間後、選手たちは自分史上最速のレースを実現できるだろうか。彼らの走りを、最後まで見届けたい。

著者

佐藤 麻水(Asami Sato)
佐藤 麻水(Asami Sato)
音楽や映画などのカルチャーとサッカーの記事が得意。趣味はヨガと市民プールで泳ぐこと。

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