HANDBALL

新たな熱狂が生まれた日。ハンドボール日本代表「彗星JAPAN」が、名門「パリ・サン=ジェルマン」と代々木第一体育館で激突。

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photo by Kazuki Okamoto / text by Reiya Kaji

5,012人。残暑の厳しい平日夜、代々木第一体育館に詰めかけたファンの数である。この日開催されたのは、「PSGハンドボールジャパンツアー」。

ハンドボール日本代表「彗星JAPAN」と、フランスの超名門「パリ・サン=ジェルマン」が激突した。
2日前には日本唯一のプロハンドボールチーム、ジークスター東京が対戦するも29-31で惜敗。彗星JAPANは大学生主体の若い力を結集し、世界最高峰の実力を誇るスター軍団に挑んだ。

▼善戦も、PSGが終始圧倒

開始1分、彗星JAPANが#10 戸井のゴールで早々に先制。しかき徐々にPSGの地力を見せ、点差が離れていく。途中、#15 テンネセンが反則で2分間の退場となるもPSG優位は変わらず。19-14で前半を終了。

後半15分、PSG #6 スタインズが2分間の退場となり流れが変わる。数的優位を活かし、彗星JAPAN #59 末岡らのゴールで最大8点差のビハインドから5点差まで詰め寄った。しかし、反撃はここまで。彗星JAPANのシュートは止められ、PSGはスピードとパワーで圧倒。点差が詰まらない。
中でもPSG #71 プランディのシュートは別格。ゴールエリアのラインギリギリから大きく跳んで1.5秒ほど浮いた(ように見える)状態で、GKの動きを見抜いてからのシュートを何度も決めた。
後半は18-17と善戦も、最終スコアは37-31。PSGがその強さを明確に示した。

▼2分間の退場

ハンドボールでは悪質な反則や危険行為が繰り返された時、レフェリーから2分間の退場が宣告される。その間、チームは補充選手を送ることはできないので数的不利となる。PSGはこの試合を通して、4度の退場を記録。つまり、60分中8分間もの数的不利な時間が生まれていた。にも関わらず、その隙を彗星JAPANに突かれることはなく、圧倒的なチーム力を示した。

それでも後半23分、PSG #5 オマルのフリースローを止めた #66 林のスーパーセーブや、#54 伊禮の5ゴールなど見せ場は作り、代々木第一体育館に詰めかけた5,012名のファンを大いに盛り上げた。

▼息をつかせぬ場内演出

場内演出にも趣向を凝らした。スタジアムMCには東京ヤクルトスワローズ主催試合のアナウンスでおなじみ、パトリック・ユウ。新規ファン向けに、ハンドボールのルールやポジションについても動画で解説したほか、クラップでの応援をリード。来場者にはハリセンが配られ、クラップの音圧は選手たちへの大きな後押しとなった。

試合前にはピアニスト・松井咲子によるパリスペシャルメドレー、ハーフタイムには7人組ダンスグループ・PSYCHIC FEVERのパフォーマンス。試合後には、特典チケットを購入したファンを対象に、選手との記念撮影も行われた。

開場後から試合終了後まで、ハンドボールを初めて観戦する観客にも息をつかせる間を与えず、熱狂を生み出し続けた。9月に開幕するリーグHへの期待を膨らませる、熱いゲームとなった。

▼試合後インタビュー

PSGヘッドコーチ:ラウル・ゴンザレス・グティエレス
「非常に難しい試合だった。日本代表に内容を与えてしまった。しかし、自分たちの良いプレーを日本のファンに見せることができてよかった」

強烈なインパクトを残した3ゴールを決めたPSG #71 プランディ
「日本代表はクオリティの高いチーム。すごく情熱を感じた。自分たちのいいプレーを見せられたが、問題点もある。リーグ戦開幕に向けて修正していきたい。おとといのジークスター東京と、きょうの日本代表と戦えて感謝している。(滞在中やりたいことは?と聞かれて)できれば京都にいったり富士山にのぼったりしたいけれど、叶うかな。日本文化をリスペクトしているし、歓迎に感謝している」

きょうが彗星JAPANを率いる初陣となった、トニー・ジローナHC
「良い経験ができたし、日本の若い選手が頑張ってくれた。今まで作ってきた速いハンドボールは続けつつ、新たな戦術もミックスさせて強いチームにしていきたい。これからリーグHも始まるので、選手を応援してほしい」

彗星JAPANでのデビュー戦ながらも随所に光るゲームコントロールを見せ、フリースローも決めた#59 末岡拓美
「経験の少ない中、PSGと対戦できて感謝でいっぱい。世界トップレベルのチームにどこまで自分が通用するか?という気持ちと、親子2世代での日本代表がきょう叶った(父・政広さんが元代表選手)ので気持ちが入りすぎていた。世界と戦うにはまだ自分の足りなさを感じたが、チームメイトのハードワークに助けられた。ロス五輪でベスト4以上を掲げているので、それを中心選手として達成できるようにやっていきたい」

Date:8.22.2024
Location:Yoyogi National Stadium 1st Gymnasium
Attendance:5,012
Referee:河合威延、臼井健

PROFILE

梶 礼哉(Reiya Kaji)
梶 礼哉(Reiya Kaji)
北海道江別市出身のフォトグラファー / ビデオグラファー / ライター。小樽商科大学在学中の2017年、ドイツ野球ブンデスリーガ傘下(地域リーグ)バイロイト・ブレーブスでプレー。MAX100km/hの直球と70km/hのカーブを武器に投手としてそこそこの活躍を見せる。卒業後、紆余曲折を経て株式会社ワンライフに所属。FERGUSでは撮影とインタビュー・執筆を担当。

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